感染後の福祉・医療制度
HIV感染者は、医療や介護などを受けるにあたってさまざまな制度を活用することができます。これらの多くはHIV訴訟の和解を契機とした恒久対策の一環として実現されてきました。これらの制度を簡単に紹介します。
身体障害者福祉法に定められた障害認定基準にあてはまる人に交付される手帳です。
この手帳により、身体障害によって起こる生活上のハンディをカバーするための、さまざまな福祉サービスが受けられます。HIV感染者には、内部障害の「免疫機能障害」として、病気の状況に応じて手帳が交付されます。
手帳で受けられる医療費助成
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重度心身障害者医療費
身体障害者手帳をもっている方の福祉の向上を図るために、医療費の一部を助成する制度です。ただし、重度心身障害者医療費助成には所得制限があり、手帳の等級の範囲・受けられるサービスの内容は各自治体で異なります。 -
障害者自立支援医療
身体障害者手帳を持っている方が、障害を軽くしたり、取り除いたり、進行を防いだりするために受ける、特定の治療に関する医療費の助成制度です。HIV感染症では、抗HIV療法、免疫調節療法、その他合併症の予防や治療などHIV感染に対する医療に限り対象となります。自己負担額は定率1割負担が原則ですが、上限額(0円~20000円/月:所得により異なる)が決められています。
手帳で受けられる福祉(制度・基準は各自治体によって異なります)
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日常生活の援助
福祉タクシー、駐車禁止の対象除外 等 -
税の減免
所得税・住民税の控除、自動車関係の税の減免 等 -
各種料金の軽減
鉄道運賃の割引、バス運賃の割引、有料道路通行料の割引 等
手帳で受けられる手当
- 特別障害者手当 等
手帳については、お住まいの自治体(市区町村)にお問い合わせください。
年金制度の中に、心身に障害があるために働けないか、働くことにかなりの制限を受ける場合に受けられる、所得の保障制度です。「ヒト免疫不全ウイルス感染症による障害」として病状、治療、症状の経過を十分考慮し、労働及び日常生活上の障害を総合的に認定されます。
加入している年金、申請する時期によって提出する書類が異なります。自治体の窓口や年金事務所にお問い合わせください。
社会保険に加入されている方が、病気のためにもともと就いていた仕事をすることができず、給料が支給されない場合に、基準となる給料の3分の2が保障される制度です。
申請窓口は全国健康保険協会となっています。
☆訪問看護
自宅で医療的なケアが必要な場合、看護師による訪問看護を受けることができます。訪問看護には医療保険によるものと、介護保険によるものがあります。
主治医からの指示書が必要になりますので、かかりつけの医療機関にご相談ください。
☆介護
ホームヘルパーの派遣、ショートステイ、訪問入浴などの介護支援を受けることができます。
介護保険によるものと障害者自立支援法によるものとがあります。65歳以上の方、もしくは40歳以上で特定の疾病を持つ方が介護保険の対象となり、それ以外の障害者手帳を持つ方が障害者自立支援法の対象になります。
それぞれ市区町村に申請し、認定を受ける必要があります。お住まいの市区町村にご相談ください。
☆特定疾病療養(長期高額疾病)
血友病、血液製剤投与に関係するHIV感染症(二次・三次感染を含む)の方は、保険による医療費の自己負担上限額が10,000円になります。
ご利用の医療保険の窓口にお問い合わせください。
20歳以上の先天性血液凝固因子障害、もしくは血液凝固因子製剤の投与によるHIV感染症の方が、対象となる疾病に関する治療を受ける際、医療費の自己負担と入院時の食事療養費が無料になります。
毎年、保健所もしくは都道府県に申請が必要です。
根本治療の方法が確立されていない、AIDSの発症予防に役立てるため、健康管理費用を支給し、報告した健康状態の情報をもとに、予防のための研究を行う事業です。
血液製剤によるHIV感染者、二次感染者、三次感染者のうち、AIDSを発症しかつ裁判上の和解が成立している方に対して、発症者健康管理手当が支給されます。